第22回:土用丑の日が教えてくれたこと

オフィス・ハナが15年に渡って毎週欠かさず行っている、スーパーのチラシ検証会。

毎週様々な提案やレシピが紙面を埋めるスーパーのチラシを前に、

様々な世代の主婦が意見・感想を述べるのを

邪魔しないように、楽しくリサーチし、ダイアログを収集しています。

先日は「土用丑の日」の週のチラシがテーマになりました。

 

「土用丑の日」はスーパーにとってドル箱。

高額商品であるうなぎが年間で最も売れる日ですから

各社が競い合って自慢の長焼きの大きな写真を掲載します。

こだわりポイント、安全性、美味しい温め方の手ほどき、

家族で分け合うためのレシピ、お弁当などなど、情報満載でアピールです。

「ご一緒にしじみ汁はいかがでしょうか?」

「『う』のつく牛肉もご用意がございます!」

「うなぎパイ、うなぎのお菓子も集めました!」と盛りだくさんです。

 

検証会はさぞ盛り上がるかと思いきや、

「土用丑の日」のチラシは「盛り上がらないチラシテーマ」として

ここ10年近く不動のNo.1として君臨しています。

(ちなみに盛り上がらないチラシテーマNo.2は「父の日」)

 

理由は何か?

 

まず「うなぎ」は女性にとってテンションが上がる食べ物ではないというのが1つ。

私はうなぎは好きな方ですが、女性のランチ会で「うなぎ屋に行こう」という提案は50年生きてきて皆無。

「うなぎって良いよね〜」「うなぎ行きた〜い!」なんて話題になったことはありません。

なのになぜ、「土用丑の日」は江戸時代から脈々と受け継がれてきたのかといえば、

「土用丑の日」は嫁仕事だからです。

一家の主に精をつけて立派にお勤めを果たしていただくようにするのは、嫁の務め。

嫁が務めを果たしているか?姑チェックも入ります。

◯◯家の嫁たるもの、土用丑の日にうなぎを食卓に出すのは常識!だったわけです。

ですから昔のサザエさんでは、うなぎが出てくるのは波平さんとマスオさんだけ。カツオやワカメはもちろん、サザエさんの前にも蒲焼のお皿はありませんでした。

 

しかし現代。

疲れているのはパパだけじゃない。ママだってマルチタスクでヘトヘトです。

子供達だって塾だ習い事だ宿題だと、結構なおお疲れモード。

暑さも昔とは比較になりません。

土用丑の日は、もはや「一家の主」のためのものではなくなりました。

家族全員が精をつけないといけない時代の到来です。

一家に1枚で良かった長焼きが、家族の人数分必要になりました。

主婦にとって、これはちょっと勇気のいる金額になるわけです。

 

このコスト高の問題が、

「土用丑の日」が盛り上がらない2番めの理由です。

 

 

そして、3つ目の理由がシニアマーケティングに関わる人なら注目したい

「広告デザイン」の問題です。

 

女性はこの時期、食欲減退が顕著です。

重いものは無理。

素麺と水ようかん程度の、のど越しの良いもしか、受け付けられません。

 

スタミナアップは重点テーマではあるものの、

がっつり・こってりは目が拒否してしまいます。

頭に入ってこないのです。

 

土用丑の日のチラシは、ほぼ蒲焼のこってりした茶色のタレの色でしめられています。

シズル感たっぷりの湯気、その奥には熱々の炭火の炎。

 

食欲減退・お疲れMAXの主婦の脳は、

「無理」とか「パス」とか「無し」の信号しか出せません。

 

つまり土用丑の日のチラシは、女性に優しくないデザインだったのです。

 

過去の売上データは、土用丑の日の鰻の売上を「年間第1位」を示しています。

家計調査のデータでもトップクラスの登場率を誇る献立です。

様々なマーケティングデータでも、「土用丑の日に鰻を食べる」と答えた人は50%に若干届かない程度の高支持率と伝えています。

チラシ検証会では盛り上がらないテーマですが、

「土用丑の日」はこれまで、ポテンシャルの高いシーズンモチベーションであり続けてきました。

しかし今後女性たちが「嫁仕事」という荷を降ろした時、今まで通り・・というわけにはいかないでしょう。

現代女性と「土用丑の日」の新しい関わり方を模索し、チラシデザインを含めた商品の見た目から「重さ」を取り払うなどの改善が鍵となるでしょう。

今「土用丑の日」を支えているのは嫁仕事を受け継ぐシニアです。

まずはシニアの体調と感情に配慮したコミュニケーションを見直しから始めるみると良いかもしれません。

 

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第21回:「半分、青い。」のバリア。

NHK連続テレビ小説「半分、青い。」が好調なようです。

主人公の仕事が漫画家・映画監督など表現に関わるお仕事なので

クリエイティブ視点で視ていると

登場人物のセリフが「金言」の宝庫。

思わず納得、深くうなずくことも多々あり、

バブル時代の小物達の「あった、あった、これあった!」という懐かしさも相まって、

私も結構楽しく視ています。

 

ところが。

70代以上のシニアに聞いてみますと

「半分、青い。はもう観ていない。」という離脱組が多いのです。

 

恋愛要素が多いからかしらね・・・。と思っていましたが、

あるシニアモニターさんの一言で「なるほどっ!!」と気付きました。

 

「半分、青い。」には、

”セリフが聞こえにくい”というバリアがありました。

 

主人公スズメちゃんの、ちょっと早口で文語調な話し方は、

確かに、耳が少し遠くなった高齢の方々には、

何を言っているのか聞き取りづらい。

 

そして、スズメちゃんのママである松雪さん、

そのお友達の原田知世ちゃんの話し方は

ささやきボイスで聞き取りづらい。

 

さらに、最近登場してきた「涼ちゃん」のオバサマ3人も

そろって高音弾丸トーク。

 

これでは、セリフのほとんどが、もやもやっとしか理解できないので、

ドラマのストーリーを理解するのが難しい。

よく分からないけどいつも揉めている。という状態が毎朝だと、

ちょっとつらいですよね。

これが、高齢者のドラマ離脱を促進しているのかもしれません。

 

主人公のスズメちゃんは、片耳が聴こえないという役どころ。

そのことで彼女が不自由しているようなシーンはほぼありません。

なのに、観ている高齢者の方が、聴こえなくて不自由していたなんて、

皮肉ですね。。。。。

 

高齢の方は、言わなくても、聞き取りづらさを感じている方は結構多いです。

大声で話しかける必要はありませんが、

短い言葉で、文節を区切って、はっきり発音すれば、

聞き取りやすくなります。

 

市役所や病院、銀行や携帯電話のお店、薬局など、

テキパキと早口で次々に説明される場所は、

私達にとっては何も問題ありませんが、

高齢の方にとってはバリアです。

「高齢だから飲み込みが悪い」のではなく、

サービスの提供側がバリア(障壁)を持っていると理解しましょう。

 

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第20回:「敬老の日」をどう捉えるか。

敬老の日は、長老を敬愛し長寿を祝う国民の祝日。

なのですが、実際の敬老の日の主役は「孫と祖母」です。

孫から祖母にギフトを贈るのが、敬老の日らしいあり方になっています。

ほとんどの幼稚園・保育園には敬老の日に向けて、園児に祖父母へ贈る絵を書かせたり、お歌をプレゼントする時間が設けられています。

最近首都圏では、結婚した娘と母親(妻の実母)が近居して、娘の子育てを娘の実母が手伝う「外孫育て」が増えており、核家族であっても孫の園行事に祖母が出席することが珍しくなくなりました。

孫が小学校に上がると、敬老の日のギフトは「電話」になります。孫が祖父母に元気な声を聞かせてあげることが贈りものです。

中学校移行になると、敬老の日は孫達にとって重要な日ではなくなります。敬老の日はしばし忘れ去られます。

そして孫達の就職・結婚・出産をきっかけに「敬老の日」に祖父母に何かギフトをを贈りたいという気持ちが復活することが多いようです。

就職・結婚・出産は女性ライフステージの節目です。

孫が大人になってからの「敬老の日」の復活は、特に女性に多くみられるようです。

「敬老の日」は孫が大人になってはじめて、消費を伴う行事になります。

”祖父母のためにプレゼントを買う”とか”三世代または四世代が揃って外食をする”などが消費の上位です。

しかし「敬老の日」の消費は、母の日のように毎年の恒例行事にはなっていません。先程挙げた孫のライフステージの節目、祖父母の喜寿や白寿といった節目の年にされることが多いようです。

母の日ギフトには「嫁の勤め」の側面がありますが、敬老の日には義務が伴わないからかもしれません。

では、マーケティング的にはこの「敬老の日」をどう捉えたら良いでしょうか。

どうやら大きな消費はなさそうです。ハナのモニターさん達からも「なんにもいらない・欲しくないと言われるから、ギフト選びに苦労する」という声をよく聞きます。

実際送ったギフトを聞いてみても、グリーティングカードや肌触りの良い布小物などが人気で、旅行や衣料品といった大型消費に結びつきにくいように思われます。

敬老の日にお金を使ってもらうには・・・。という命題にはどう答えたら良いでしょうか。

なかなか難しい問題です。

もしかしたら、素敵なギフトカタログを作るよりも、敬老の日は「わたしのルーツを確認する日」といったスピリチュアルな視点で「孫と祖父母が語らう時間」の重要性を啓蒙する方がよいのかもしれません。販促よりもブランディングです。

 

明るい色のお洋服を着て、私のルーツ会いに行こう!

とか。

みなさんは、どう思われますか?

第19回:女性を対象としたチラシ・パンフレットへのデザイン的配慮

以前も少し触れましたが、チラシやパンフレットをデザインするにあたっての配慮ポイントをシェアいたします。

「見えにくさ」「目の疲れ」に対するお悩みは、40代から始まっています。

老眼が始まると細かい文字が苦手になり、なんでもザザッと斜め読みする傾向が出てきます。

白内障の場合は老眼と違って「小さい文字が読みにくい」というよりも、

まぶしい、かすむ、ぼけて見える、暗いと見えない、全体的に黄色味がかって見えているのでコントラストがはっきりしないなどの症状がありますが、個人差が大きいのが特徴です。

老眼と白内障に共通したお困りごととしては、

段差が分かりづらかったり、逆に平坦な場所を段差があると勘違いしたり、探しモノが見つかりにくくなる、地下鉄MAPのように色によって分けられているものの見極め・理解が難しくなったりします。

 

私は長年、流通業のチラシのモニター検証会にてモデレーターを務めていますが、

字が小さい・ごちゃごちゃしている・探している情報が見つかりくいなどの視覚的バリアがあるチラシには否定的な意見が集まることが多く、目から入る情報が心に与える影響の大きさに毎回驚きます。

目のお悩みを持っている女性に「見やすさ=親切さ」を与えるポイントとしては、

1、背景には、写真や文字のコントラストが際立つ「白」を背景に用いる。

2、情報をコンパクトにまとめて、さらにカテゴリ毎に四角く縁取りして囲い、見出しの対象がどの商品を指すのかを明確にする。

3、デザインに法則性を持たせる。

などが上げられます。

デザイナーにとっては単調で面白みに欠けるデザインになるかもしれませんが、

チラシやパンフレットには詳しさよりも、斜め読みでも全体像を把握できる端的さを優先しましょう。

 

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第18回:シニアマーケティングと地域性

仕事側、全国あちこちでシニア世代の方々と直接お話しする機会に恵まれますが、

地域によってライフスタイルが驚くほど違うというこを実感します。

同じ県内であっても、それぞれの集落に特徴を持っており、

「その町ではできるけど、我が町では難しい。」という変えがたい事情がそれぞにあります。

余談ですが、

知人のフランス人男性が日本の温泉で広めたいテラピーがあり、

日本全国の温泉地の有力者を訪問してプレゼンテーションを行ったところ、

彼が最初に覚えた言葉が「スバラシイケド、ムズカシイ~」だったと教えてくれたことがあります。

内容的にはとても魅力的で、もし実現できたらスバラシイのだけど、

村の事情を考えたら実現は難しい。。。

彼のプレゼンテーションへの反応が、全国どこでもそんな風だったと想像します。

フランス人である彼は、

「スバラシイのにムズカシイって意味ワカラナイ。スバラシイならやれば良い。アメリカの投資家は素晴らしいからやりましょう!です。ニホンジン、ワカラナ~イ。」と言っていましたが、

日本人である私にはよーくわかります。

特に山間部の集落においては、貴重な水資源を村民になって分けてもらう・村から分配された限られた農地を守って行くために他者との関わりに非常に氣をつかってきたという長い歴史があります。

どこにも定着化した大人の事情やタブーがあり、それらを軽んじて生きて行くのは困難です。何をするにも、神よりよりおっかない世間様と円満な関係を維持せねばなりません。

イノベーションなどという新しい理屈が通るのは、東京の都心部他ごく一部であると理解しなくては、ビジネスフレームは間違ったものになるでしょう。

他の土地で成功したことが、そのまま通用するとは限りません。シニアマーケティングにおいては、地域性を理解し全てをオーダーメイドする意識を持つことが成功の鍵といえるでしょう。

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第17回:”駅近ホテル住まい”がコンセプトの老人ホームで、地域経済は活性するか?

先日 、NHKを観ていたらこんなニュースが流れていました。

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静岡・まちの中心部に老人ホーム・その狙いは

(出典JCCテレビ全てより:https://jcc.jp/news/13436774/)

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映像を見ると、駅前の一等地にホテルライクな高級老人ホームを建てて、お金を持っているアクティブシニアに移住してもらうことで市の経済を発展させたいという内容になっていました。

この老人ホームは静岡市にとっての豪華客船「あすか」になれるのか?はたまた「タイタニック」になって沈むのか?という問いかけのようなニュースに思えました。

静岡市の試みは、成功できるでしょうか?

市民にとってメリットがあるほどの”町の経済発展”を老人ホームに期待するならば、ホームの住人にはいつまでも元気でいていただく必要があります。

そうであれば、ホームに住まれる方のQOLアップと体力維持を最優先に考えるべきです。

しかし、施設の青写真を拝見したところ、建物の形状は平屋でなくてビルタイプ。。。 そこにまず一抹の不安を覚えました。

高齢になって高層階に住むことは、若い人と比べてマイナス面が多いもの。体力的なことだけでなく、メンタルもにも大きく作用します。

ソフト面での成功の鍵は、名店街事務局長のおっしゃる「地域住民とホーム住人の交流」がどれほど活性化できるかにかかっています。

ホームの住人をお客様としておもてなしするだけではシニアの満足は得られません。旅行ならまだしも、「安心」と「おもてなし」だけで人は元気を維持できません。むしろ、どんどん衰えていきます。

衰えたシニアはお金持ちであっても、消費の決定権は遠方に住む家族に移行します。こうなると静岡市にお金が落ちることはあまり期待できません。

いつまでもアクティブでいるためには、好奇心を刺激する何かが必要です。

若い世代と混じって何かを企画するために議論したり、運営に加わって体を使う。

お金を払っても体験したいエンターテイメント・芸術が身近にある。

新しいもの、珍しいものに触れることができるお買い物の楽しみがある。

季節を感じるアクティビティや没頭できる趣味を自ら選択して消費できる。

社会貢献していると実感できる組織に属したり活動することができる。

 

こういったことが刺激になり、QOLを高い状態に保つ要素になるのです。

シニアに元気でいてもらうには、医療・介護がそばにあるだけでは不十分。

それをどこまで用意できるのかが、成功の鍵となるでしょう。

 

静岡市の試みが成功することを切にお祈りいたします!

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第16回:女性のライフステージから表現傾向を考察する

第15回で、

30代:自己主張よりも揉めないことを優先する(空気を読むことに長けている)層

40代:自分の意見よりも一般論を優先する(本音は隠しておきたい)層

50代60代:なぜ自分がそう思うのか、その理由を相手と共有できているか確認しながらコトを進めたい(結果よりもプロセス優先)層

60代〜:コミュニケーション能力の成熟期を迎えた層

と、ご紹介いたしました。

 

今回は、女性のライフステージから「なぜそういった傾向になるのか」を考察します。

 

「考察」といっても実はとても答えはシンプル。

女性の表現傾向は「子育て」と紐付いていると、私は考えています。

 

30代は、子供の進路・受験の悩みはそれほど深刻ではなく、まだ少し先のことだと感じている母親が多く、この時期は母子が所属するコミュニティを見渡したときに我が子の成長が「平均値内」にあることが母親に安心をもたらします。自ずと「右に同じ」という表現が多くなります。

40代になると、子供の進路の悩みが現実的になってきます。「よその家庭はどうしているかしら?」と気になるものの、立ち入ったことを聞くのは失礼かも・・・と思うと聞くに聞けないという気持ち、「少しでも我が子有利になるようにコトを進めたい」という母親としての防衛本能も強く発揮されます。我が子を守るため拳をしっかり結んで手の内は見せない、いわゆる臨戦態勢が求められるシーンが多く、表現も「(我が家は違うかもしれないけど)一般的にはそうだと思いますよ〜」「(今は違うけど)子供が小さい時はそうでした」といったものになります。その方が安心できるからです。

50代60代は、子供が独立する時期。今までと違って、我が子はもはや自分の分身ではなくなります。子供との関係において「言わずもがな」の時代は終わり、母子が一緒の時間を過ごすことも少なくなります。だからこそ、一緒にいるなら我が子と気持ちを共有したいと思います。また子育てを卒業した母親は時間的な余裕を持てるようになりますので、自然と「なぜそうするのか・どうやってこの結果になったのか」をゆっくり考えられるようになります。結論はどうあれ、プロセスのシェアに時間をかけることの方が心地よいのです。

 

さて、60代以上のシニアはどうでしょう。

子供は完全に独立し、夫婦2人の生活になります。子育て中の娘・息子を見守る存在になります。子育て渦中からは抜け出した状態なので、客観的に冷静に、経験済のことと自分の時代とは変化したことを吟味できる環境にいます。孫育てに参加している女性であっても母親のような緊張感・臨戦態勢ではないので、「私はこう思うけど、他の人はそうなのね〜」というおおらかさ。違いを楽しめる余裕があるのです。

 

ハナモニターさんを通して、シニアの方に接していると「早くシニアになりたい」という気持ちになります。

歳をとるのが楽しみです。

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第15回:シニアにお話しを聞くのは大変?

シニアライフのマーケティングを通して、たくさんのご高齢の方にお会いする機会に恵まれます。

座談会やサービス検証会にお集まりいただいて、お話しを聞くような場面もありますし、イベントでご一緒させていただくことも多いです。

そんなお話しをしますと

「シニアにお話しを聞くのは大変でしょう。」とか「進行に苦労されるのではないですか?」などと言われるとこがあります。

しかし、そんなことはありません。

むしろ、シニアの方とのお仕事の方が気苦労が少ないと感じています。

現役世代は時間に追われていますから、オンタイムで動いておられる方々が多く、集合は直前で解散は前倒しが有り難いもの。

一方シニアは、前後の時間にかなりの余裕を持たれて行動されますので、運営側としてはハラハラすることがありませんので助かります。

そしてシニアは(特に女性層において)共感力を発揮しつつ自制し過ぎないという特長があり、グループインタビューなどでは和やかなムードで協調しつつも、強い意見に引っ張られることなく、参加者さんそれぞれの本音を話して頂けます。

これは、自己主張よりも揉めないことを優先する(空気を読むことに長けている)30代や、

自分の意見よりも一般論を優先する(本音は隠しておきたい)40代、

なぜ自分がそう思うのか、その理由を相手と共有できているか確認しながらコトを進めたい(結果よりもプロセス優先)な50代60代と比較して、

「シニアならではのコミュニケーション能力の成熟」を感じます。

これは主催者側にとって大変ありがたいことです。精度の高いヒアリングが実現すれば、消費者インサイトを見誤ることがありません。

またシニア女性の多くは、ブログやSNSを活用しており、日々の生活での通信環境が整っているため、事前事後のやり取りは若い世代と同じようにスムーズであり、年代的にエシカル(社会貢献)的マインドが強い傾向にあるので、モニターする商品・サービスの下見をしたり考察をするといった予習を自主的に行う方もいらっしゃいます。

というわけで、

冒頭の「シニアにお話しを聞くのは大変でしょう。」というご心配には

「いやいや、むしろ。シニアの方とのお仕事の方が気苦労が少ない」と私は答えています。

とは言え、「シニアは面倒臭くないどころか、現役世代よりむしろ楽」という価値観を主催者側持っているかいないか、自分達世代に対するリスペクトがあるかどうかをシニアの方々はしっかり見極めておられますので、運営側のコミュニケーションスキルも高めておく必要はあります。

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第14回:シニアの社会貢献

シニアライフデコーダーの橋詰です。
オフィス・ハナのシニアマーケティングを担当しています。

シニアライフの翻訳者「シニアライフデコーダー」のお仕事について解説しています。

第14回のテーマは「シニアの社会貢献」です。

シニアライフにおいて、社会貢献は重要なテーマです。

このブログでも度々触れているテーマで、
第6回では「シニアライフにおける社会貢献」を、
第13回では「シニアがアルバイトをする目的は?(anリサーチより)」と題し、仕事を通して社会に貢献したいと希望するシニアについて触れています。

今回はJTB総合研究所が2017年に調査した”「今シニア」「新シニア」の暮らしとライフスタイル”より、
シニアの社会貢献意識に触れた項目をピックアップしてご紹介いたします。

 出典:JTB総合研修所(https://www.tourism.jp/wp/wp-content/uploads/2017/03/second-life-new-senior.pdf)
調査対象者のサマリーは、出典先をご確認ください。

この調査で私たちが注目したのは、
調査対象者を自分が幸福であると感じている「幸せシニア」と「そうでないと感じているシニア」に分け、
それぞれ「近隣や地元の人との関わり」と「生きがい」について問う調査データです。

「図22 近隣や地元の人との関わり」を見ますと、

”幸せシニア”は、生活圏内の顔見知りとのやり取りが頻繁であることがわかります。調査全体の平均値より全ての項目で高い数値を示しており、「地元の清掃やボランティア活動に参加」にも積極的なことがわかります。

シニアライフにおけるコミィニケーションの内容は、連絡事項の通達や社会的なホットニュースに留まらず、健康に関する情報交換・共通の知人の訃報・財産の話しなど、プライベートでセンシティブなことも多く、それらの話題をシェアすることは、お互い様の精神や共感や思いやりといった一種社会貢献的な要素を多く含んでます。

これらを日常的に頻繁に行う人に「幸せシニア」が多いという事実は、大変興味深いことです。

 

さらに「図23 生きがい」の調査を見てみましょう。

ここでも「幸せシニア」は、

「地域を盛り上げること」「周囲の調整役として貢献すること」「若い人の成長をサポートすること」に意欲的です。「そうでないシニア」のポイントと比較するとどれも倍近いスコアになっています。

他に「幸せシニア」が「そうでないシニア」の倍近いスコアをただきだしている項目を見て見ると、「家族の役に立つこと」と「自分の夢や目標を実現すること」があります。

「幸せシニア」にとって、社会貢献(家族は社会の最小単位)は犠牲や義務ではなく、自分の夢や目標を実現することにつながる生きがいであるようです。

 

アクティブシニアの代表者でクリスチャンでもあった故・日野原重明医師は

「他人のために自分の時間を使うことを、神様はお喜びになる。」と発言されていました。

 

私はクリスチャンではありませんが、日常的にシニアに関わり、

更にこういった調査結果を見るにつけ、

日野原先生のおっしゃることが腑に落ちるような気がします。

 

企業と個人との快適で良好なコミュニケーションを築こうとするとき、

企業発信の一方通行な「貢献」を仕組みとせず、

シニアもまた企業の活動を支えているという実感が持てるような余地をプランニングに組み込みたいものです。

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次回は、
「アクティブシニアの実際」をお届けいたします。
お楽しみに!

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第13回:シニアがアルバイトをする目的は?(anレポートより)

シニアライフデコーダーの橋詰です。
オフィス・ハナのシニアマーケティングを担当しています。

シニアライフの翻訳者「シニアライフデコーダー」のお仕事について解説しています。

第13回ではアルバイト情報誌「an」のanレポート(パーソルキャリア株式会社)の
シニアに関する調査をご紹介いたします。

まずは
「シニアがアルバイトする目的は?」ご紹介します。
→amレポートはこちら
https://weban.jp/contents/an_report/repo_cont/trend/20170116.html

この調査ではアルバイトするシニアを4タイプに分類し、
それぞれの仕事を持つ「目的」と「働き方」を紹介しています。

「自由に使えるお金が欲しい」ために働く人は、やり甲斐よりも週5勤務や長期間採用を求めています。男子高校生や大学生のようですね。

「健康維持」のために働く人には、警備やゴルフ場管理などが人気。「仕事なら強制的に体を動かせる」がその理由です。スポーツジム感覚で働くことが目的なので、自宅至近と短時間勤務が理想。

上記の2タイプは男性が多いようです。

「社会との繋がり」を求めて働く人は、同僚との良好な人間関係と仕事にやり甲斐を求めています。若い人とのつながり、仲間作りなど、仕事仲間から「元気をもらう」こと、つまりアンチエイジング効果を求める傾向にあるようです。

そして4分類の最後に紹介されているのが、仕事に「やり甲斐」を求めるタイプ。
自身のスキルを活かして社会の役に立ちたいと考える人です。
講師やインストラクター・福祉介護職など「ありがとう」と言われる職業が人気です。
独りで黙々と作業する、軽作業などの仕事を選ぶ人が少ないのが特徴だそうです。

この下の2つのタイプは女性が多いそうです。

シニア男性(夫)の仕事の報酬は「自分のお小遣い」。
シニア女性(妻)の仕事の報酬は「感謝されること」。
シニア共通の仕事の報酬は「若さの維持」。

40代世帯の我が家でも、同じ答えが返ってきそうです。。

私からすれば、どんな目的にしろ60歳すぎても仕事を持っているというだけで
本当に素晴らしいと思います!!

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次回は、
「シニアと社会貢献」について考察します。

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