オフィス・ハナが15年に渡って毎週欠かさず行っている、スーパーのチラシ検証会。
毎週様々な提案やレシピが紙面を埋めるスーパーのチラシを前に、
様々な世代の主婦が意見・感想を述べるのを
邪魔しないように、楽しくリサーチし、ダイアログを収集しています。
先日は「土用丑の日」の週のチラシがテーマになりました。
「土用丑の日」はスーパーにとってドル箱。
高額商品であるうなぎが年間で最も売れる日ですから
各社が競い合って自慢の長焼きの大きな写真を掲載します。
こだわりポイント、安全性、美味しい温め方の手ほどき、
家族で分け合うためのレシピ、お弁当などなど、情報満載でアピールです。
「ご一緒にしじみ汁はいかがでしょうか?」
「『う』のつく牛肉もご用意がございます!」
「うなぎパイ、うなぎのお菓子も集めました!」と盛りだくさんです。
検証会はさぞ盛り上がるかと思いきや、
「土用丑の日」のチラシは「盛り上がらないチラシテーマ」として
ここ10年近く不動のNo.1として君臨しています。
(ちなみに盛り上がらないチラシテーマNo.2は「父の日」)
理由は何か?
まず「うなぎ」は女性にとってテンションが上がる食べ物ではないというのが1つ。
私はうなぎは好きな方ですが、女性のランチ会で「うなぎ屋に行こう」という提案は50年生きてきて皆無。
「うなぎって良いよね〜」「うなぎ行きた〜い!」なんて話題になったことはありません。
なのになぜ、「土用丑の日」は江戸時代から脈々と受け継がれてきたのかといえば、
「土用丑の日」は嫁仕事だからです。
一家の主に精をつけて立派にお勤めを果たしていただくようにするのは、嫁の務め。
嫁が務めを果たしているか?姑チェックも入ります。
◯◯家の嫁たるもの、土用丑の日にうなぎを食卓に出すのは常識!だったわけです。
ですから昔のサザエさんでは、うなぎが出てくるのは波平さんとマスオさんだけ。カツオやワカメはもちろん、サザエさんの前にも蒲焼のお皿はありませんでした。
しかし現代。
疲れているのはパパだけじゃない。ママだってマルチタスクでヘトヘトです。
子供達だって塾だ習い事だ宿題だと、結構なおお疲れモード。
暑さも昔とは比較になりません。
土用丑の日は、もはや「一家の主」のためのものではなくなりました。
家族全員が精をつけないといけない時代の到来です。
一家に1枚で良かった長焼きが、家族の人数分必要になりました。
主婦にとって、これはちょっと勇気のいる金額になるわけです。
このコスト高の問題が、
「土用丑の日」が盛り上がらない2番めの理由です。
そして、3つ目の理由がシニアマーケティングに関わる人なら注目したい
「広告デザイン」の問題です。
女性はこの時期、食欲減退が顕著です。
重いものは無理。
素麺と水ようかん程度の、のど越しの良いもしか、受け付けられません。
スタミナアップは重点テーマではあるものの、
がっつり・こってりは目が拒否してしまいます。
頭に入ってこないのです。
土用丑の日のチラシは、ほぼ蒲焼のこってりした茶色のタレの色でしめられています。
シズル感たっぷりの湯気、その奥には熱々の炭火の炎。
食欲減退・お疲れMAXの主婦の脳は、
「無理」とか「パス」とか「無し」の信号しか出せません。
つまり土用丑の日のチラシは、女性に優しくないデザインだったのです。
過去の売上データは、土用丑の日の鰻の売上を「年間第1位」を示しています。
家計調査のデータでもトップクラスの登場率を誇る献立です。
様々なマーケティングデータでも、「土用丑の日に鰻を食べる」と答えた人は50%に若干届かない程度の高支持率と伝えています。
チラシ検証会では盛り上がらないテーマですが、
「土用丑の日」はこれまで、ポテンシャルの高いシーズンモチベーションであり続けてきました。
しかし今後女性たちが「嫁仕事」という荷を降ろした時、今まで通り・・というわけにはいかないでしょう。
現代女性と「土用丑の日」の新しい関わり方を模索し、チラシデザインを含めた商品の見た目から「重さ」を取り払うなどの改善が鍵となるでしょう。
今「土用丑の日」を支えているのは嫁仕事を受け継ぐシニアです。
まずはシニアの体調と感情に配慮したコミュニケーションを見直しから始めるみると良いかもしれません。
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