シニアライフデコーダーの橋詰です。
オフィス・ハナのシニアマーケティングを担当しています。
シニアライフデコーダーのお仕事について解説いたします。
第4回のテーマは「バリアフリーとユニバーサルデザイン」です。
今回は社会的な概念であるバリアフリーとユニバーサルデザインの違いを紐解き、
シニアマーケティングでの活用を考えます。
まずバリアフリーについてです。
この言葉は日本では主に都市計画や構造物の設計に用いられている概念です。
日本での一般的な解釈では、
移動が不自由な人にとっての障壁(バリア)を取り除く配慮を施すこと、例えば、
段差をなくして車椅子の通行を容易にしたり、つまづきを回避するようにフロアをデザインする、
スロープを設けるなどの施策があげられます。
多目的トイレ・点字ブロック・車椅子専用の駐車スペースの設置なども含まれます。
(本来のバリアフリー概念より狭義な捉え方ですが)日本では
「既存型の構造では使用に際し不自由を感じる方々用に、
機能的に配慮された特別な仕様を用意する」といった意味で使われていることが多いため、
「障壁を取り除く」というよりも、
身体的に不自由を感じない人とそうでない人を分けて考えることが前提になっているように見えます。
次にユニバーサルデザインですが、こちらは、
「あらかじめ、身体的な不自由さの有無・世代・性別・人種等に関わらず
誰もが快適に使えるように、環境や生活をデザインする」という考え方で、
日本では工業製品(プロダクツ)によく用いられています。
例えば、
「右利きの人も左利きの人も握力がない人も簡単に使えるハサミ」や、
全機種でアクセシビリティ機能を実装しているiphone(Apple)もユニバーサルデザインのプロダクツです。
実はエレベーターも、妊婦さんも、ベビーカーのママも、高齢者も、
元気な人はもちろん、車椅子の方も、目が見えない・見えにくい人も、
分け隔てなく快適に使うことができるユニバーサルデザインと言えます。
また、表参道ヒルズのらせん構造もこれに該当します。
身体的に不自由を感じている人とそうでない人を分けて考えるバリアフリー。
あらかじめ、誰もが同じように快適に使えるように考案するユニバーサルデザイン。
シニアマーケティングを考えたとき、
用いるべき概念は間違いなくバリアフリーよりもユニバーサルデザインです。
なぜなら、このブログの第2回目で述べた通り、
シニアを「アクティブ」にする重要な要素は「快適性(居心地の悪さを感じないこと)」であり、
現役世代と「今の私」がシームレスであればあるほど
「私向き」で「親切である」と評価する傾向が高いからです。
年齢で分けられることを良しとしないシニア層に
バリアフリーの概念を持ち込むのは得策とは言えないでしょう。
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ここで「シニアに優しいお店づくり」という課題について
シニアライフデコーダーの思考をもって取り組んでみましょう!
まずはシニアライフにおける身体的特徴をとらえます。
白内障や老眼の見え方に配慮し、照明の照度・色調、価格表記等を配慮します。
膝に痛み・肩の痛み・関節の可動範囲が狭くなるなどの特徴に配慮した什器のデザインをします。
かがまないと取れない場所への商品陳列は避ける等の配慮もいるでしょう。
厚生労働省の発表によると、平成26年調査では70歳以上女性の平均身長は148.3cm、
60代女性でも153.2cmですから、
レジの高さ、ショッピングカートの大きさ、ショッパーのサイズにも快適値があるはずです。
加齢によって視野も狭くなりますので、
一つの棚の情報量(並べる商品の数)にも最適値を探求します。
後期高齢者になると歩行器代わりにシニアカートをおす人が増えます。
カートを押しながら店内を回遊できれば、快適性が上がります。
通路の広さ、マイカートと買い物カゴとの親和性はどうでしょうか?
「今分からないことは今質問したい(後回しにしたら忘れちゃう)」という特性に対応できれば、
売り逃がしを防ぐことができます。
筋力や持久力の低下に対応するなら
店内にちょっと休憩できる椅子を設置するというアイディアが生まれるはずです。
新しいことへの理解に時間がかかるようになりますから、
店内サインや告知は直感的に理解できるように、大きくてシンプルに。
こうして、ひとつひとつあげてみると、
シニアの身体的特徴に配慮することは、シニアだけでなく、
妊婦さん・ベビーカーをおすママ・車椅子の人・子供・
四十肩や老眼が始まる40代後半の人などの快適性も
同時にアップできることに気がつきます。
シニアを起点にすることで、ユニバーサルデザインが実現していますね。
これがシニアマーケティングの懐の深いところです。
また、感情面への配慮も重要です。
人生の終盤に入ると物欲は低くなってきます。
「何を買うか」という興味・好奇心よりも
「誰から買うか」が優先され、購入はよりエモーショナルになっていきます。
シニアライフにおいて「誰かのお役に立っている」ということは
生き甲斐であり楽しみであり生きる気力ですから、
「お店つくり」のプランニングに、
あらかじめ多くのシニアをインクルーシブ(積極的に関わってもらう)することは、
強力なサポーター(お店のファン)を育成することにつながります。
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このブログではすでに何度も触れていますが、
シニアとのより良いコミュニケーションを目指そうとするときは、
身体的・社会的・感情的・哲学的な観点からシニアの人生をホリスティックに理解し、
彼らが心地よいと感じるコトモノ、
彼らへ「私のこと」として受け止められるコトモノとなるよう
プランニングとディレクションを進めましょう。
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次回は、
「家族ニーズと利用者ニーズ」を
シニアデコーダーがマーケティング視点でお届けします。
お楽しみに!!
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